【講義の概要】
数学Iで学んだ多変数の微積分の補足として2変数のベクトル値関数を取り上げ,その取り扱い方法と幾何学的・物理的意味を学ぶ.3変数あるいはより多くの変数を扱う方法については,数理科学IIIで学習する.数学や物理など数学を本格的に使う分野,あるいは電磁気学・流体を扱う分野に将来進む場合は,数理科学IIIを併せて履修しておくことが望ましい.
【講義内容】
講義内容はおおむね以下の通りである.
1. 陰関数定理と逆関数定理:関係式f(x,y)=0によって結ばれた2つの変数x,yがあったとき,yをxの関数(関数fによって表される陰関数)として表せるための条件を考察する.また変数変換とその応用について学ぶ.
2. 平面曲線の幾何:1で学習したことに基づき,方程式f(x,y)=0が定める曲線のパラメータ表示,接ベクトルと法ベクトル,曲率,弧長などの求め方を考える.
3. 平面上のベクトル場と線積分:ベクトル場の概念を説明し,関数が定める勾配ベクトル場などの基本的例とその意味を考える.また平面のベクトル場(またはベクトル場に対応する微分1形式)の曲線上の積分(線積分)を調べる.
4. 条件付き最大最小問題:f(x,y)=0という拘束条件を受けている変数x,yの関数g(x,y)について,その極大・極小を求めるラグランジュの未定乗数法を学び,幾何学的意味を考察する.
5. 面積分:空間内の曲面を2つのパラメータによって表し,曲面上の積分によって面積などを表すことを学ぶ.重積分に関する変数変換公式を完全にマスターすることが重要である.
6. グリーンの定理とガウスの定理:平面の中の閉曲線上での線積分を曲線が囲む領域での面積分に帰着するグリーンの定理とガウスの定理を学び,平面ベクトル場の回転と発散の意味を考察する.
【キーワード】
陰関数定理と逆関数定理 | 等位線、陰関数、逆関数、逆写像、変数変換 |
平面曲線の幾何 | 曲線のパラメータ表示、接ベクトル、法線、弧長、曲率 |
平面上のベクトル場と線積分 | ベクトル場、勾配ベクトル場、微分1形式、線積分 |
条件付き最大最小問題 | 極値、ラグランジュの未定乗数法 |
面積分 | 曲面上の積分、重積分の変数変換 |
グリーンの定理とガウスの定理 | 線積分、面積分、グリーンの定理、ガウスの定理 |
【評価方法】期末試験を行い評価する.レポート問題を出す予定で、レポートもある程度勘案する。
【教科書】使用しない.
【参考書】例えば以下のような参考書がある。
一松 信 著 | 「解析学序説」 (新版)下巻 | 裳華房 | ISBN: 978-4-7853-1031-8 | (1982年) |
岩堀長慶 著 | 「ベクトル解析」 | 裳華房 | ISBN978-4-7853-1526-9 | (1996年) |
小林昭七 著 | 「続 微分積分読本 −多変数−」 | 裳華房 | ISBN:978-4-7853-1526-9 | (2001年) |
坪井 俊 著 | 「ベクトル解析と幾何学」 | 朝倉書店 | ISBN:978-4-254-11585-7 | (2002年) |
講義内容 | ||
1 |
4月19日 |
平面の曲線、関数のグラフ、曲線のパラメータ表示、接ベクトル、法線 |
2 |
4月26日 |
弧長、曲率、空間の曲面、平面上の関数のグラフ、凸関数 |
3 |
5月2日(月) |
グラフの接平面、2変数関数の極値、2変数関数の等位線、勾配ベクトル場(グラディエント・ベクトル場)、曲線の表示のまとめ |
4 |
5月10日 |
等位面、陰関数定理、2次曲面。 |
5 |
5月17日 |
2変数の逆写像定理 |
6 |
5月24日 |
縮小写像の原理 |
7 |
5月31日 |
積分の変数変換 |
8 |
6月7日 |
曲面の表示、曲面の面積 |
9 |
6月14日 |
平面上の微分1形式、線積分、線積分と面積分、積分可能条件 |
10 |
6月21日 |
グリーンの定理、平面のベクトル場のローテーション |
11 |
6月28日 |
平面上の曲線族、フロー、 平面のベクトル場のダイバージェンスとガウスの定理 |
12 |
7月5日 |
2つの曲線族、2つの2変数関数の等位線族。条件付き極値問題、ラグランジュの未定乗数法 |
13 |
7月12日 |
ベクトル場と微分形式、平面のベクトル場のローテーション、ダイバージェンスの意味 |
試験 |
? |
試験範囲 講義で述べた上記の事項。 参考書、ノート等の持ち込みは認めない。 |