数理科学U  (2年 理一(33-39組))   担当:坪井 俊
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/users/tsuboi/index-j.html      tsuboi@ms.u-tokyo.ac.jp
 水曜日2限     721 教室


【講義の概要】
種々の量の時間発展を記述するのが常微分方程式であり,力学を始めとして自然科学で基本的な役割を果たす.この講義では常微分方程式について,その理論的 基礎を学ぶとともに,個々の具体例に対する解法と解のもつ性質について解説する.数学Iで学習した微分・積分および数学IIで学んだ固有値・固有ベクトル に関する知識の総合的応用篇であるとともに,進んで偏微分方程式論を学ぶための入門篇でもある.数学・物理学はもとより,理学・工学などの分野で自然現象 を深く研究する場合には必須の科目である.

【講義内容】
講義内容はおおむね以下の通りである.

1. 簡単な常微分方程式:変数分離型の1階微分方程式など求積法によって解くことができる方程式や,ポテンシャルを通じて2階の微分方程式を変数分離型1階方 程式に帰着する手法などを扱う.(余裕があれば、熱方程式など簡単な偏微分方程式を,常微分方程式に帰着する方法などにも触れる.)

2. 線形連立微分方程式:線形代数を用いて定数係数の連立線形微分方程式を完全に解く方法を解説し,自由振動子方程式や波動方程式などに代表される線形微分方 程式に対しては,重ね合わせの原理が成立することを見る.(余裕があれば、応用として,固有関数による展開を用いた熱方程式の解法などにも触れる.)

3. 逐次近似法:常微分方程式の初期値問題に対する一般論を論じる.常微分方程式の解を,次々に近似解を作っていったその極限として構成する方法を学ぶ.また 初期値を与えたときに方程式の解が存在してしかも唯一であるための条件や,解の滑らかさの程度について理論的に考察する.

4. 特殊解と一般解:係数となる関数に特異点がある方程式や非線形の方程式を扱う際に起こる様々な現象(特異解の存在,解の爆発など)について余裕があれば解 説する.また解の漸近挙動や安定性について定性的な考察を行なう.

キーワード
常微分方程式の初等解法 変数分離型.1階線形方程式.全微分型.
基礎定理 初期値問題.解の存在と一意性.
定数係数線形常微分方程式 斉次方程式と非斉次方程式.行列の指数関数.定数変化法.演算子による 解法.
線形性の応用 重ね合わせの原理.変数係数線形方程式.基本解.ロンスキー行列式.


【評価方法】期末試験の他,小テストを一度行い評価する.小テストの結果は期末試験の成績が十分でないときに考慮する。

【教科書】使用しない.

【参考書】例えば以下のような参考書がある。

柳田 英二 , 栄 伸一郎 著 「常微分方程式論」 朝倉書店 講座 数学の考え方 7 ISBN: 4254115873 (2002年)
高橋陽一郎 著 「微分方程式入門」 東京大学出版会 基礎数学 6 ISBN: 4130621041 (1988年)
笠原 晧司 著 「微分方程式の基礎」  朝倉書店 数理科学ライブラリー5 ISBN: 9784254114157 (1982年)
稲見武夫 著 「常微分方程式」  岩波書店 理工系の基礎数学 ISBN: 40000797354 (1998年)
俣野博 著 常微分方程式入門―基礎から応用へ― 岩波書店 ISBN: 400005452X (2003年)
辻岡邦夫 著 「常微分方程式」 朝倉書店 すうがくぶっくす4 ISBN: 9784254114645 (1989年)


【履修前の準備】数学I,数学IIの内容を復習しながら用いる.



講義内容 配布資料

4月9日

関数の微分とグラフの傾き。積分法。常微分方程式の例。
「x’=x」の解き方いろいろ。
PDF ファイル

4月16日
不定積分して解ける常微分方程式(変数分離形、同次形)。
1階線形常微分方程式。定数変化法。(*ベルヌーイの方程式、リッカチ型方程式*)
PDF ファイル

4月23日
不変な多変数関数が見つかる場合(完全微分方程式)。(*積分因子*)
(*簡単な偏微分方程式の特別な解。*)
常微分方程式とその解。曲線族と微分方程式。
連立常微分方程式。ベクトル場と解曲線。
PDF ファイル

4月30日
(*コンピュータによる経験的数値解法。*)
高階常微分方程式の1階化。相空間。
正規形1階常微分方程式の初期値問題。
PDF ファイル

5月7日

正規形1階常微分方程式の解の存在と一意性の定理。
(*常微分方程式の解のパラメータについての連続性。微分可能性。*)
PDF ファイル
5月14日 小テスト    問題 PDF ファイル 解答例  PDF ファイル
5月21日 2変数1階線形常微分方程式。2行2列の行列の標準形。 PDF ファイル

5月28日
n次行列の指数関数と1階線形常微分方程式。
(*行列のジョルダン標準形、行列の固有多項式、射影行列の方法*)。
定数変化法。
PDF ファイル

6月4日

定数係数高階線形常微分方程式。斉次方程式と非斉次方程式。
解空間の性質。重ね合わせの原理。斉次方程式の基本解。
(*ベクトル空間、ベクトル空間の基底*)。

10 6月11日 高階線形常微分方程式。 PDF ファイル
11 6月18日 古典的電気回路。演算子法または記号法。 PDF ファイル
12

6月25日

線形性とその応用(*線分、円上の熱方程式。*)。 PDF ファイル
13

7月2日

変数係数線形常微分方程式。1階線形の場合。
基本解。行列式とトレースロンスキー行列。(*グリーンの公式。*)
PDF ファイル




試験

7月23日

試験範囲 講義で述べた上記の事項。
(*  *)の部分は試験範囲としない。
参考書、ノート等の持ち込みは認めない。